私は、大学受験がうまくいかず、行きたかった東京藝術大学を二年間浪人しました。
結局東京藝術大学には合格することができず、東京音楽大学のピアノ演奏家コースに入学しました。
東京音楽大学もとてもレベルが高く、素敵な学校です。
しかし、東京藝術大学を目指していた私にとっては、
複雑な想いのまま片道二時間半をかけて通う、大学生活が始まりました。
そして、大学三年生から四年生に進学する年、
年度末の実技試験で思ったように点数が取れず、
ピアノ演奏家コースからピアノ専攻に転科することになってしまったのです。
(当時、ピアノ演奏家コースではある一定の点数が取れないと、
ピアノ専攻に落とされてしまうという制度がありました)
自分では満足いく演奏が出来たはず、それでも人の耳にはそうは聞こえないのだなと痛感し、
少しというか、大きな挫折を味わったのです。
そのまま四年生に進学し、東京藝術大学への気持ちもわずかに残ったまま、
東京音楽大学でも満足いく結果を残せないまま、悶々としながら、師事していた先生と何度も話し合い、
東京藝術大学大学院の室内楽科を受験することにしました。
大好きだった伴奏や室内楽の勉強をもっとしたいと思ったのです。
毎日毎日練習に明け暮れていたある日、いつものように練習していた時、
左手に激痛が走り、力が入らなくなりました。
靭帯の炎症を起こし、大学院受験は止むを得ず諦めました。
自分の苦しみの部分を恥さらしのように書きましたが、決して楽ではなかったこの学生生活の中で、
自分が頑張ったこと、それが伴奏でした。
人と関わることが好きで、一緒に音楽を奏でることが好きで、
コミュニケーションをとりたかった私にはぴったりだった伴奏。
周りの友達に心配されるほど、たくさんの伴奏をさせていただき、
たくさんの共演者とたくさんの音楽に出会いました。
コミュニケーションがとれなければ、アンサンブルはできません。
協調性がなければ、アンサンブルはできません。
そしてコミュニケーション能力はこれからの社会に必要なスキルだと私は思っています。
それと同時に、挨拶は基本中の基本ですが、
人としてのマナーや人間性の成長も音楽を通して学ぶことができます。
私は苦しい生活の中で、忍耐の大切さ、困難を乗り越えることの素晴らしさ、痛みのわかる優しさを学びました。
そのことは音楽をしていなければ、きっと感じることができなかったことだとも思っています。
そして人に優しさを持つことで、優しい音楽を奏でることができること、
そしてその優しさは人に伝わると考えました。
いそのまい音楽教室では、アンサンブルもできる、諦めない、
優しい音楽を奏でることができるような、素敵な人に育てます!
優しい音楽は、人を優しくします。幸せにします。
そんなお教室を目指しています。